インボイス制度:簡易課税制度の適用を受ける場合の届出書の提出に係る特例

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インボイス制度が始まりました

本日は令和5年10月7日。インボイス制度が開始されてから1週間経ちましたが、様々な方からのご相談、ご質問が日に日に増えております。

ご相談の中で結構な割合を占めるのが、「消費税を支払うのは仕方がないが、なんとか手間を省けませんか?」といった内容のものです。インボイス制度開始前は単なる情報として耳に入ってきていたものが、実際に請求書を発行したり受け取ったりする過程で、現実の問題として認識されるようになったからでしょう。

そのような状況の中、インボイスの煩わしさを大幅に軽減させてくれる「簡易課税制度」に注目する事業者が増えてきました。

そこで今回は、インボイス制度が開始された現時点でも対応可能な簡易課税制度の提出に係る期限の特例について見て行きたいと思います。

簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例(個人事業者の場合)

① インボイス開始とともに課税事業者になった方

元々免税事業者であったが、インボイス事業者になるのに合わせて課税事業者になった方については、令和5年12月31日までに「消費税課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署に提出すれば、令和5年10月1日から簡易課税により消費税の申告をすることができます。

なお、この場合の届出書の提出期限は、官公庁がお休みとなる年末年始に当たりますが、所得税の確定申告期限のように、翌営業日(この場合であれば翌年1月4日)に延長されることはありません。これについては、消費税の規定上このように記されています。

簡易課税制度選択届出書の提出期限

提出期限等が課税期間の初日の前日までとされている届出書については、該当日が日曜日等の国民の休日に当たる場合であっても、その日までに提出がなければそれぞれの規定の適用を受けることができませんのでご注意ください。

ただし、これらの届出書が郵便または信書便により提出された場合には、その郵便物または信書便物の通信日付印により表示された日に提出されたものとみなされます

したがって、少し余裕を持って提出するか、ギリギリになるようであれば、時間外でも受け付けてくれる郵便局のゆうゆう窓口で郵便・信書便で郵送するか、各税務署に設置されている時間外収受箱に投函するようにしてください。

また、免税事業者がインボイスを機に課税事業者になる場合の特例として、売上げに係る消費税額の2割だけを収める「2割特例」というものがありますが、簡易課税制度を選択していても、この2割特例と比較して有利な方を選択できるので、本則課税の面倒くさいのは絶対にイヤ!という方は必ず今年中に簡易課税制度の届出をしておきましょう。

② 従来から課税事業者だった方

元々課税事業者で本則課税を選択されていた方が、令和5年10月1日から簡易課税制度を選択することは課税期間の短縮など特別な手続きを行わないとできませんので、簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、原則として令和5年分からということになります。この場合は①の特例の適用はなく、原則的な取扱いにしたがって、令和4年12月31日までに「消費税課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

したがって、今年中に同届出書を提出した場合、簡易課税制度が適用されるのは令和6年分の消費税からとなるので注意してください。

③令和4年は免税事業者だが、令和3年分の売上高が1千万円を超える方

一番勘違いされやすいのですがこのパターンです。

直近の令和4年分が消費税の免税事業者だったので、①の特例の適用を受けることができそうな感じがするのですが、令和3年分の売上高が1千万円を超えているため、令和5年分は自動的に課税事業者となり、②と同様に取り扱われます。

最後に

インボイス制度は本当に面倒くさい制度なので、売上高が5千万円以下の個人事業者については、インボイス制度に係る事務作業を大幅に軽減させることができる簡易課税制度について、ぜひ検討していただきたいと思います。ただし、本則課税と簡易課税は納税額に有利不利が必ず発生しますので、簡易課税の選択に当たっては、必ず税理士などの指導を受けて行っていただくようお願いします。

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