インボイスに係る税務調査の現状は?

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1年10ヶ月が経過しました_

令和5年10月1日からスタートしたインボイス制度ですが、令和7年7月現在で1年10ヶ月が経過しました。

なんとなく定着してきた感じはしますが、制度の内容を完全に理解している方はまだまだ少ないのが現状です。

個人事業主の方であれば、インボイス制度開始に伴う消費税の確定申告も2回目となり、少し慣れたかもしれませんが、「この申告で本当に大丈夫だろうか?」「突然税務調査が入ったりしないだろうか?」といった不安が常に付き纏っているのではないでしょうか?

このブログでも、制度開始前後にインボイス制度で気をつける点などをほぼ毎日投稿しておりましたので、この機会にまとめ読みしていただくと嬉しです。

国税庁の対応は?

インボイス制度開始後の国税当局の方針については、開始当初から「不正計算が想定される悪質度の高い納税者を中心に実施する」とされており、インボイスの要件の一つ一つについて不備を指摘するような調査は実施されていません。

弊所におけるクライアント様への税務調査においても、この方針に準じた対応がなされており、インボイスの不備等については口頭での指摘にとどまり、次回までに整備することで、それ以上の処分は特になされていないのが現状です。

具体的な指摘事項の例として、請求書単体ではインボイスの要件を満たしていないものについて、契約書や納品書、仕切精算書などを併せて保存する、取引先から修正インボイスの交付を受ける、クレジットカード明細しかないものについて、ECサイト等から再発行を依頼するなどといったものがありました。いずれも口頭での指摘のみでそれ以上の処分はありませんでした。

ただし、インボイスの登録の有無を確認せず、全額仕入税額控除を行なっているような事例については、仕入税額控除額の特例(80%みなし控除)を適用すべき旨の指導を受けましたが、これについては、納税者の側でインボイスや帳簿等を一切保存していなかったり、非違金額が高額になる等によっては修正を求められる可能性が高いと思われます。

今後の対応は?

国税当局としては、引き続き制度の理解と定着を第一に考えており、税務調査の現場においても、先に掲げた方針を継続することととしているようです。

一方で、制度を悪用した不正還付などについては厳しく対応するとしており、例えば輸出免税制度を悪用した不正還付や、国内のペーパーカンパニー等を使った架空仕入を計上するなどの不正計算等については、従前よりも厳しい対応がなされることが予想されます。

終わりに

インボイス制度については、税負担の問題が大きいことは間違いないのですが、インボイスの要件の確認や保存に係る事務負担の増加も大きな問題となっています。

そこで、簡易課税制度の適用要件を満たす事業者については、簡易課税を選択することで、これらの事務負担を大きく減少させる可能性がありますので、一度専門家にご相談いただくことをお勧めします。

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