個人事業主の方とお話をしていると、ご自身の事業やお店のことを『うちの会社が』と表現されるのをよく聞きます。もちろん法的には会社ではないのですが、他人に説明するときには『会社』と言ってしまったほうが楽なのかもしれませんね。
このお話と同じ流れなのかもしれませんが、個人事業主の方がよく勘違いされるのが自分に対する『給与』について。同じ仕事をしていても、会社の経営者であれば給与(役員報酬)をもらえますが、個人事業であれば自分自身に給与を支払うことができません。1年間の収入から1年間の仕入や経費を引いた残り(=所得)が個人事業主の儲けになりますが、これを12ヶ月で割ったものが、毎月の給与みたいなイメージでしょうか。
次に、個人事業主の方が自分以外の誰かに対して給与を支払う場合について。
全くの他人に給与を支払う場合には、個人事業の経費とすることができます。
家族や親族に給与を支払った場合、その親族が事業主と別生計の親族であれば、給与として必要経費にすることができますが、事業主と生計を一にする親族であれば、必要経費にすることができないとされています。
ということは、お父さんのお店を手伝っている別居の長男には給与を支払えるけど、同居の次男には給与を支払えない…
これはさすがに理不尽ですね。ということで、所得税には、給与に関して次の二つの特例が用意されています。
青色事業専従者給与
個人事業主が青色申告者である場合には、一定の届出書を決められた期間内に税務署に提出することで、生計一親族に支払った対価を給与として必要経費にすることができます。
この届出書の提出期限は、通常の場合、その年の3月15日までで、届出書には給与・賞与の支給金額、支給時期等を記載しなければなりません。なお、実際の支給額のうち、届出書に記載した方法に従い、記載されている金額の範囲内で支給されたものが必要経費として認められます。
また、タイトルにあるように青色『事業専従者』給与 なので、当たり前ですが、その親族は専らその事業に従事していないといけません。これについても判定基準があり、次の通り規定されています。
- 原則・・・その年を通じて6月を超える期間従事すること(『6ヶ月』は不可)
- 特例・・・年の途中で開業・廃業したり、病気や婚姻などの事情があるときは、従事可能期間の2分の1を超えていること
- 高校や大学へ通学している場合(夜間学校を除く)や他に職業がある場合は、一般的には専従しているとは認められません
- 専従者の判定は、12月31日の現況ではなく、その年において専従者であったかどうかにより判定します
その年の1月16日以降に新たに青色事業専従者を有することになった場合、注意する点が2つあります。
- 『青色事業専従者給与に関する届出書』の提出期限 ⇒ 有することとなった日から2月以内に提出
- 専ら事業に従事するかどうかの判定 ⇒ 上記の『特例』には該当しないので、原則通り判定します
事業専従者控除
個人事業主が白色申告者である場合には、給与そのものについての特例はありませんが、事業専従者である親族がいる場合には、その親族1人につき最高50万円(配偶者の場合には最高86万円)を必要経費とみなすことができます。
『みなす』とされているのは、給与金額自体は必要経費にはならないけど、代わりに一定額を所得金額から控除しますよ、という意味なので、実際に給与が支払われているかどうかは問題ではなく、給与の支払いがなくても、この規定は適用できます。
なお、青色・白色いずれの場合も、その給与の金額は、その事業専従者の給与とされますので、会社から支給される給与と同じように所得税が課税されます。また、給与額が少額であっても、控除対象配偶者、扶養親族、配偶者特別控除の対象から外されるので、注意が必要です。