『一人親方』に支払う対価は外注費?それとも給与? その1

この3月から4月にかけて税務調査が何件も重なってしまって、しばらく記事の更新が滞っていました。申し訳ありません。

この時期に税務調査が増える理由は、国税庁の事務年度に関係しています。
国税は6月末に事業年度が終了し7月から新しい年度になりますが、税務職員の異動も併せて行われますので、6月末までにはなんとか決着させないといけない事情があります。
したがって、逆算すれば5月中には着手しておきたい⇒4月くらいにどっと税務調査が増える、ということになります。

今回の税務調査については、概ね良い結果で終えることができましたが、やはりというか、今回も一人親方に対する報酬についていろいろとチェックされました。

ここで言う「一人親方」とは、建設業などでよく見られる労働者を雇用せずに自分自身と家族だけで事業を行う事業主のことを言います。税務調査の現場では、この一人親方に支払う報酬が、外注費に当たるのか、それとも給与となるのかについて、ほぼ確実に問われます。

「なぜそんなことが問題になるの?」「勘定科目が違うだけじゃない?」と思われる方もいるでしょうが、税務上は、この2つの科目の間にはとてつもなく大きな違い(つまり税金の有利・不利)があります。

科目の性質の違いとして最も大きな点は、以下の2点。

 ① 外注費は消費税の課税対象だが、給与は消費税の課税対象外となること
 ② 特定の報酬を除き、原則として外注費には源泉徴収義務がなく、給与には源泉徴収義務があること

税務署とすれば、一人親方に対する外注費を給与とすることができれば、2つの税目で結構な金額の追加徴収が見込めるため、『おいしい』指摘項目なんだと思います。

簡単な事例を見てみましょう。

A社(消費税の課税事業者・原則課税)
B親方(消費税の免税事業者)

A社からB親方に「請負契約」に基づいて毎月700千円(税抜き)を支払い、A社は外注費に係る消費税(年額672千円)を仕入税額控除した。

B親方は受け取った報酬を「事業所得」として計算し、年間の必要経費を4,042千円計上した(所得税額372,500円)

もしもA社からB親方への報酬が給与に認定されてしまったら。。。
(住民税・事業税は無視)

 ① 外注費が給与になることで672千円の仕入税額控除が否認されます
 ② 毎月の税込報酬額756千円に対する給与源泉(乙欄)266,700円✕12月=約3,200千円の徴収漏れ
 ③ 上記に係る延滞税、過少申告加算税、不納付加算税が別途かかります
  (注)源泉徴収税額は、「扶養控除等申告書」の提出がないため「乙欄」となります。

一方、B親方にも反面調査等が行われ、事業所得が給与所得に修正されると、必要経費及び青色申告特別控除が認められなくなりますので、税負担が増えるだけでなく、反面調査等により両者の信頼関係が崩れる可能性があります。

では、これら最悪の事態を避けるためにはどうしたら良いのでしょうか?

次回の記事でそのあたりのことを纏めてみたいと思います。

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