「社宅で節税」は大丈夫?家賃設定や社内規程作成の方法は?~その3

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実際に計算してみよう!

社宅関連の話題はこれで最後となりますが、社内規程の作成方法については、旅費規程などと併せて、別の機会に解説したいと思います。

今回は、具体的な数字をもとに、借り上げ社宅制度と住宅手当の税金や手取額の違いについて見ていきましょう。

前提条件
  1. 従業員が居住する住宅の家賃は10万円とします。
  2. 1の家賃は、社宅として賃借した場合も同額とします。
  3. 社宅の家賃補助および住宅手当は共に家賃の50%(5万円)とします。
  4. 従業員の年齢は45才・控除対象配偶者あり・扶養親族なしとします。
  5. 従業員の月給は40万円とし、毎月定額で賞与はなしとします。
  6. 社会保険は令和6年分の京都府の率で計算します(建設業)。

上記をもとに毎月の従業員の手取額を計算します。

スクロールできます
項目社宅住宅手当
給与収入400,000円400,000円
住宅手当50,000円
給与合計400,000円450,000円
社会保険料▲64,361円▲69,216円
(法人負担分)(67,638円)(72,825円)
源泉所得税▲8,210円▲11,800円
家賃控除▲50,000円
家賃支払▲100,000円
手取額277,429円268,984円

社宅制度を導入することで、家賃の支払いまでを考慮した手取額が毎月8,445円(年額101,340円)増加したことになります。

同様に、法人の経費を計算します。

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項目社宅住宅手当
給与手当400,000円450,000円
法定福利費67,638円72,825円
地代家賃100,000円
受取家賃▲50,000円
差引経費計上額517,638円522,825円
(年額)(6,211,656円)(6,273,900)
法人税等(30%)1,863,300円1,881,900円

社宅制度を導入することで、毎月の経費が5,187円(62,244円)しか減少しないので、節税効果がないように見えますが、税金までを考慮したキャッシュフローは、年間で43,644円プラスとなります

最後に

これまで社宅制度について見てきましたが、結論としては同じ条件で住宅手当として支給するよりも、実質的に従業員の手取額が増える結果となり、法人の側でも節税効果というよりは、社会保険の会社負担分を減少させるなど、キャッシュフローを改善する効果があるように見えます。

ただし、これはあくまで一つの例であり、社宅契約に伴う保証金や礼金、更新料などの負担や、借り上げではなく法人が購入して社宅として利用する場合の融資元利金の返済、固定資産税等の負担など、付随する条件により得られる効果は様々なものとなります。

実際に社宅制度を構築する際には、福利厚生目的なのか、役員社宅制度を設けたいのか、節税目的なのかなど、目的をはっきりさせた上で設計するよう注意してください。

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