「社宅で節税」は大丈夫?家賃設定や社内規程作成の方法は?~その1

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社宅制度を導入すると節税になる理由

賃貸料相当額を経費にすることができます

「従業員社宅制度」とは、法人が自社名義で住宅を賃借し、法人の役員や従業員に貸し付けることで、通勤負担の軽減や業務効率の向上、雇用定着率のアップといった福利厚生効果を得る事ができる制度です。

これだけだととても従業員のことを大切にしている制度のように聞こえますが、経営者から見ると、借上社宅の家賃を法人の経費にすることができるため、合法的で有力な節税対策と捉えることもできます。

ただし、どんな物件でも社宅にすることができる訳ではありませんし、特定の役員や従業員のみ利用したり、入居する条件が従業員によって極端に異なることのないよう「借上げ社宅管理規程」等の社内規程を整備する必要があります

また、実際に入居する役員や従業員から徴収する家賃額が無償または著しく少ない場合には、賃貸料相当額またはその少ない受取家賃額との差額がその者の給与として課税されます

税務調査の際には、社宅制度の根拠となる社内規程に不備はないか、役員や従業員から受け取る家賃の計算方法に間違いはないかなど細かくチェックされるため、社宅制度の導入に際しては必ず税理士や社会保険労務士などの有識者に相談することをお勧めします。

社宅を自社で購入した場合は減価償却費や借入金利息を経費にできます

法人が社宅を借り上げるのではなく自社で購入した場合、購入年度において不動産取得税や登記に掛かる登録免許税が発生しますが、これらの税金はすべて経費として計上することができます。

また社宅として購入した建物部分については減価償却を行う必要がありますが、その減価償却費も経費として計上することができますし、銀行から融資を受けて社宅となる物件を購入した場合、その融資に係る借入金利息ももちろん経費に計上することができます。

借り上げの場合は、借り上げ賃料と従業員からの受取家賃との差額が経費となりますが、社宅を購入した場合、法人が家賃として支払うものが無くなる代わりに、これら減価償却費や支払利息、また固定資産税や管理費等が発生するため、従業員からの受取家賃を収益に計上しても、これらの経費のほうが上回ることがほとんどであるため、同様の節税メリットを得ることができます

「住宅手当」との相違点

社宅制度と間違いやすい制度に「住宅手当制度」があります。社宅制度も住宅手当もともに法人が役員や従業員の住宅費用の一部を補助するという点では同様の効果がありますが、両者の違いは契約の主体が法人か従業員個人かにあります

社宅制度は法人名義で社宅を借り上げ、役員や従業員に貸し出す制度ですが、住宅手当は、役員や従業員が個人で契約して居住する戸建住宅や賃借物件の家賃の一部を補助する制度となります。

具体例1

当社は従業員Aに対し、毎月30万円の給与を支給しています。また当社は社宅を保有し、借り上げ家賃として毎月10万円を支払い、Aに対し月額5万円で賃貸しています。

この場合、法人は給与として30万円、地代家賃として10万円支払うとともに、Aから自己負担分の家賃5万円を受け取りますので、毎月経費として計上できる金額は35万円となります。また、Aの側では30万円の給与に対して社会保険や源泉所得税が徴収されます。

具体例2

当社は従業員Aに対し、毎月30万円の給与を支給しています。A は自身で契約するマンションに毎月10万円の家賃を支払って生活していますが、当社は従業員が賃借物件に入居している場合、家賃の50%相当額を住宅手当として支給しているため、Aに対しても毎月5万円の住宅手当を支給しています。

この場合、法人は毎月の給与30万円に住宅手当5万円を加算した35万円を経費として計上できますが、住宅手当は給与の一部を構成するため、合計支給額の35万円に対して社会保険や源泉所得税が徴収されます。

住宅手当として支給する場合、給与の一部として所得税や住民税の課税対象になるだけでなく、社会保険の対象にもなりますので、本人の負担が増えるだけでなく、社会保険料を折半する法人の負担も増えることになりますので、どちらの制度を導入するかは多面的に検討する必要があるでしょう。

最後に

次回はこの続きとして、実際に家賃をいくらに設定したらよいのか考えてみたいと思います。

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