定額減税:個人事業主が知っておくべき「所得税の予定納税額の減額申請」

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個人事業主に係る「定額減税」の実施方法

個人事業主については、給与所得者のように毎月天引きされる源泉所得税はありませんので(注)、原則として、令和6年分の確定申告により納付すべき所得税額から定額減税されることになります。

(注)個人事業主でも源泉徴収される場合

個人事業主が行っている業務が、所得税法第204条に掲げる報酬に該当する場合(税理士報酬やデザイン報酬、社会保険診療報酬など)は、一定の計算方法により算出した所得税額が、その報酬の支払者により源泉徴収されますが、給与所得と異なり、その源泉徴収される所得税額から定額減税は行われません

ただし、令和5年分の確定申告における予定納税基準額が15万円以上の方については、令和6年7月と11月の2回に分けて、それぞれその予定納税基準額の3分の1の金額を納付するよう定められている(これを「予定納税」といいます)ことから、予定納税が生ずる個人事業主については、第1期分の予定納税額から自動的に控除する事とされています。

なお、予定納税額については、所轄の税務署から6月の中頃までに書面で通知されますが、令和5年分の予定納税基準額から計算したい方については、過去の記事を参照してください。

予定納税額からは本人分しか控除されません

第1期分の予定納税額から控除されるのは、控除対象者本人分(定額減税4万円のうち、所得税分3万円)のみとなります。控除対象者に同一生計配偶者や扶養親族がおり、かつ第1期分の予定納税額が対象者全員分の定額減税額を上回っていたとしても、第1期分の予定納税額から本人分以外の定額減税は実施されません。

具体例
  • 定額減税の対象者…納税者本人・配偶者・扶養親族1名
  • 所得税の定額減税額…9万円
  • 令和5年分の予定納税基準額…30万円

上記具体例による第1期分の予定納税額は以下のようになります。

予定納税基準額30万円 ✕ 1/3 - 本人分の所得税の減税額3万円 = 7万円

また第2期分の予定納税額は以下のようになります。

予定納税基準額30万円 ✕ 1/3 = 10万円

「所得税の予定納税額の減額申請」により本人以外も控除可

所得税の予定納税は、基本的に前年の予定納税基準額を基に機械的に計算されるものなので、当年における業績不振や、コロナ禍のような不可抗力的な状況を全く考慮していません。したがって、その年において生じた様々な事情により、今年の所得の見込額が前年を大きく下回ることが見込まれる場合には、事前に申請することで、第1期分または第2期分、およびその両方について、予定納税額を減額することができる「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請」という手続きが設けられています

個人事業主に係る定額減税においては、この所得税の予定納税額の減額申請を行うことで、予定納税の対象となる本人分のみならず、その同一生計配偶者や扶養親族に係る定額減税についても、第1期分および第2期分の予定納税額からの控除を受けることができます

ただし、全ての個人事業主がこの手続きを行える訳ではなく、元々の予定納税額の減額承認申請の適用要件を満たしていなければ、この制度を利用することはできません。

なお、減額承認申請の適用要件を満たし、申請を行った場合は前述の具体例は以下のような対応になります。

具体例
  • 定額減税の対象者…納税者本人・配偶者・扶養親族1名
  • 所得税の定額減税額…9万円
  • 令和5年分の予定納税基準額…30万円
  • 予定納税額の減額承認後の予定納税額
    第1期分…7万円
    第2期分…7万円

上記具体例による第1期分の予定納税額は以下のようになります。

承認を受けた予定納税額7万円 -(本人分・配偶者分・扶養親族分の合計9万円)= 0円

また第2期分の予定納税額は以下のようになります。

承認を受けた予定納税額7万円 -(第1期分で控除しきれなかった分2万円)= 5万円

所得税の予定納税額の減額申請手続

予定納税額の減額承認申請は定額減税のためにある制度ではありませんので、元々の制度上の適用要件を満たさないと、申請をすることはできません。

ただし、あくまでも承認申請を行う時点での予想に基づいて申請を行うため、結果として申請通りに所得等が減少しない場合がありますが、それにより何らかのペナルティが課せられたり、修正等を求められることはありません。明らかに虚偽の申請を行うことは論外ですが、経営不振が続いても、年末に大きな契約が舞い込んでくることもありますので、あまり厳密に考えすぎなくても良いと思います。

減額承認申請ができる条件

次に掲げる要件のいずれかを満たすことが条件となります。

  1. 個人事業を廃業・休業・失業をした場合
  2. 業績不振等により、所得が前年よりも減少すると見込まれる場合
  3. 災害・盗難・横領などの理由で損害を受けた場合
  4. 本年分の所得控除額や税額控除額が増加し、納税額が減ると見込まれる場合
  5. その他特殊な事情がある場合

減額承認申請書の提出および予定納税額の納付期限

減額承認申請書の提出期限

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手続原則特例補足
第1期分および第2期分令和6年7月16日(火)令和6年7月31日(水)令和6年のみの特例
第2期分のみ令和6年11月15日(金)変更なし

予定納税額の納付期限

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手続原則特例補足
第1期分令和6年7月1日(月)から
令和6年7月31日(水)まで
令和6年7月1日(月)から
令和6年9月30日(月)まで
令和6年のみの特例
第2期分令和6年11月1日(金)から
令和6年12月2日(月)まで
変更なし

最後に

予定納税額の減額承認申請はあまり馴染みがないと思われがちですが、コロナ禍の頃は弊所でも申請のお手伝いをすることが多かったように思います。

今回は定額減税に絡めて解説しましたが、普段の資金繰りにも活用できる制度ですので、これを機にこの制度を覚えていただけたらと思います。

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