地震・雷・火事・税金?災害により建物が被害を受けた場合の税金はどうなるの?

一昨年、京都はたいへん大きな台風に襲われました。当時私が住んでいた上京区でも、『こんなに大きな台風に襲われたのは初めてだ』とお年寄りたちが話しておられたほどで、近くのマンションの室外機が飛んできたりと、本当に怖い思いをしました。未だに屋根にブルーシートが張られたままのお宅もあり、本当に心が痛みます。

ところで、個人がこのような災害に見舞われ、建物に大きな損害が生じた場合、税制上の手当を受けることができるのをご存知でしょうか?

さらに、損害を受けた建物が、ご自身が住まいとして利用しているものか、賃貸マンションなどの事業用のものなのかにより適用される規定が異なりますので、注意してみていきましょう。

まず、大前提として『災害』の定義ですが、次のいずれかに限られます。

  • 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
  • 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
  • 害虫などの生物による異常な災害

次に、災害により被害を受けた建物の利用状況により、適用できる規定を選択します。

  • 不動産賃貸業以外の事業用の建物(店舗や事務所、工場など)⇒『資産損失』
  • 不動産賃貸業用の建物(マンションやアパート)⇒『資産損失』または『資産損失と雑損控除』の有利選択
  • 居住用の建物(マイホーム)⇒『雑損控除』

事業用資産に生じた損失(資産損失)の必要経費算入

対象となる建物は、不動産所得(事業的規模)、事業所得、山林所得の起因となる建物ですが、山林所得はかなり特殊なので、ここでは無視します。ちなみに、私の実家の生業は林業でして、父は毎年山林所得の申告をしておりました。

また、不動産所得のカッコ書きにある『事業的規模』の意味ですが、形式的な基準としてよく言われるのが、『5棟10室50台』基準です。これは、アパートやマンションなどについては、貸与できる独立した室数がおおむね10 室以上、独立した家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上、駐車場については、貸付台数がおおむね50 台以上であれば、原則として事業的規模で営まれていると判断されます。なお、この形式基準に当てはまらなくても、社会通念上事業と称するに至る規模であれば、『事業的規模』と判断されます。

適用については、青色申告・白色申告を問いません。また、損失を受けた原因については問われませんが、ここでは『災害』に限定します。

次の算式により計算した損失額の全額を、不動産所得・事業所得の必要経費に計上します。

災害直前の建物の帳簿価額 - 災害直後の建物の時価)- 廃材として処分できた金額 - 保険金で手当された金額

災害直前の建物の帳簿価額については、減価償却の明細から計算できますし、災害直後の建物の時価については、保険金の査定などで判明すると思います。なお、保険金については、災害に係る損害保険金は所得税法上非課税扱いになりますので、上記の算式により補填された保険金の方が大きい場合であっても、保険金に対して課税されることはありません。

ついでに、災害により支払われる保険金の取り扱いは、次のようになります。

  • 火災保険金・損害賠償金等・・・資産損失の金額の計算上控除できます。
  • 収益補償金等・・・総収入金額に計上し、資産損失の計算上控除できません。
  • 人的損害に係る保険金等・・・資産損失の計算上控除できませんが、保険金自体は非課税となります。

次に、事業的規模ではない不動産所得または雑所得の起因となる建物についてですが、適用要件や損失額の計算は一緒です。違いは、必要経費に計上できる金額が『全額』ではなく『所得金額を限度』としている点です。つまり、いくら損失額が多くても不動産所得がマイナスにはならず、切り捨てられます。

雑損控除

先程の『資産損失』は、不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得の金額の計算上、必要経費にできるという規定なので、これらの事業を営んでいなければ対象とはなりませんが、『雑損控除』は全員が適用できる『所得控除』の仲間なので、多少考え方は異なりますが、災害というキーワードで考えると、両者には一定の関連があります。

雑損控除は、『災害・盗難・横領によって、資産について損害を受けた場合には一定の金額を所得から控除できますよ』という規定です(詐欺や恐喝による損害は対象外です)。

損害を受けた資産の所有者は、納税者本人かその年の総所得金額が38万円以下の同一生計親族(事業専従者可)でなければならず、対象資産も生活に通常必要な住宅や家具、衣類などに限定されており、事業用の資産や別荘などは対象となりません

次の算式により計算した金額のうち、いずれか多い金額を雑損控除の金額とします。

①(差引損失額)-(総所得金額等)✕ 10%
②(差引損失額のうち災害関連支出の金額)- 5万円

なお、損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年以後(3年間が限度)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。

資産損失と雑損控除の有利適用

雑損控除の適用資産からは事業用資産を除くと説明しましたが、事業的規模で営んでいない不動産事業用の居住用賃貸物件が災害により損壊した場合には、 資産損失と雑損控除のどちらか有利な規定を選択して適用することができます。

ただし、災害関連支出(災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額をいいます)の有無により所得控除額の計算が異なることや、総所得金額等の10%の限度があることなどを踏まえ、資産損失と雑損控除のどちらの規定を適用するかは、十分に比較検討する必要があります。

この記事を書いた人

世良 寛之

世良税理士事務所
所長・税理士