「収入金額」と「所得金額」と「納付税額」

コロナ禍により、持続化給付金等様々な申請を行った方も多いと思いますが、その申請書にご自身の所得状況を記載する際、「収入金額」「所得金額」「納付税額」など違いのよくわからない項目に戸惑われたことはないでしょうか?

例えば、「年間の所得が600万円を超える場合には適用対象となりません」と言われた場合、自分がこれに当てはまるかどうかを瞬時に判断できる方は少ないと思います。

そこで、主に個人事業者の方が税務署に提出する「確定申告書B」をみながら、収入と所得、税額の違いを見ていきましょう。

「収入金額」と「所得金額」

左上に緑色の枠で「収入金額」、その下に水色の枠で「所得金額」、同じ枠の下段に「⑨合計」欄があるのがおわかりでしょうか?

「収入金額」は、自営業の方であれば「売上金額」、サラリーマンの方であれば「社会保険や税金が控除される前の額面金額」、年金受給者であれば「介護保険や税金が控除される前の額面金額」となります。

一方「所得金額」は、自営業の方であれば売上金額から仕入や諸経費を引いた後の金額、サラリーマンの方であれば額面金額から「給与所得控除額」を控除した金額、年金受給者であれば額面金額から「公的年金等控除額」を控除した後の金額となります。

「給与所得控除額」「公的年金等控除額」とは、収入金額に応じて自動的に控除される金額で、自営業者が売上から控除する諸経費と同じようなものとお考え下さい。

所得税は非常にややこしい構造になっていて、事業所得や給与所得など、10種類の所得に区分されています。詳しく知りたい方は、下記のリンクをご覧ください。

「所得金額」はいくつもある

「所得金額」について、なんとなくわかったと思いますが、ややこしいことに、所得税の世界では、「所得金額」と呼ばれるものが複数あります。

各種所得の金額

前述した10種類の所得について、それぞれに規定された方法により計算した所得金額をいいます。たとえば、副業でマンション経営をしながら、時々メルカリでやり取りしているサラリーマンの方であれば、給与所得と不動産所得、雑所得という3つの所得金額が発生します。

合計所得金額

上記の所得金額を合計したもの(前述の「⑨合計」)が合計所得金額となります。様々な申請や届出などで使用する「所得金額」はだいたいこの合計所得金額のことを指しています。

課税所得金額

合計所得金額から様々な「所得控除額」を控除した後の金額が課税所得金額となります。この課税所得金額に所得税率を乗じて計算したものが所得税額ですが、さらに住宅ローン控除などの税額控除を行った後の金額が、実際の納付税額となります。

税額を計算する前の課税所得金額を申請等であまり使用しない理由は、所得控除が14種類もあり、同じ合計所得金額の方でも医療費の多寡や扶養親族等の有無、社会保険の種類といった個人の事情などで控除後の所得金額に大きな差が生じてしまうため、評価の基準にすることが難しいためです。

「納付税額」は所得税か住民税かを確認

公的な所得証明書等に記載する納税額は、所得税と住民税のどちらを記載するか注意が必要です。

所得税の納税額を記載する場合には、確定申告書に記載した「㊼納める税金」欄の金額を使用しますが、何らかの事情で確定申告書や源泉徴収票が用意できない場合は、管轄の税務署で納税証明書を交付して貰う必要があります。

また、住民税の納税額を記載する場合には、住民税の納付書に記載されている金額もしくは管轄の市区町村にて納税証明書を交付してもらいます。

今年改正された「高等学校等就学支援金制度」を例に取ると

「高等学校等就学支援金制度」とは

「高等学校等就学支援金」とは、「高等学校等就学支援制度」に基づき、国公立・私立問わず、高等学校等に通う所得等要件を満たす世帯の生徒に対して、授業料に充てることを目的として支給されるお金です。

2020年からは、私立高校に通う生徒へ支援が手厚くなるように変更されており、モデルケースの世帯(両親のうちどちらか一方が働き、高校生一人(16歳以上)、中学生一人の子どもがいる世帯)において、年収約910万円未満であれば、支給された金額との相殺で授業料がほぼ無料になるという制度です。

改正前と改正後の受給資格

この支援金制度、改正前の受給資格は以下のような表現でした。

高校等(高専、高等専修学校等を含む)に在学する、日本国内に住所を有する方が対象です。
ただし、次のいずれかに該当する方は対象となりません(一部抜粋)。
・保護者等の道府県民税所得割と市町村民税所得割の合算額が、50万7,000円以上の方(年収目安約910万円以上の方)

つまり、住民税の納税額のことをいっているのですが、全くピンときませんよね。これが改正後にはこのような表現に変わりました。

保護者の所得制限の基準が、住民税額(所得割額)から課税所得に変更されたのにお気づきでしょうか?結果としてはほぼ同じことを言っているのですが、前述の内容が理解できていない方にとっては、どこが変更されたのかさっぱりわからないですよね。

最後に

同じような申請書を何枚も書いていた際、納税額を書く欄に所得金額を書いてしまったために何回も事務局から確認され、期限ギリギリになってしまったことがあったとお客様から聞いたことがあります。一生に一回しか書かないような申請書だったりするので、うっかりミスで却下されないように、皆様も良く注意して記載するようにしましょう。

この記事を書いた人

世良 寛之