所得税の扶養控除と住民税の扶養控除
サラリーマンの方が年末に提出する「扶養控除等申告書」。年末調整に必要な資料なのできちんと書かれていると思いますが、扶養親族の氏名等を書く欄が真ん中あたりと下段に分かれていたり、色々チェックする項目があったりと、昔と比べてややこしくなったと感じませんか?
以前は受けられていたはずの扶養控除が受けられなくなっていたり、控除額が変わっていたりするので、今回は整理する意味で、詳しくお話したいとおもいます。
「年少扶養親族」とは?
年少扶養親族とは、その年の12月31日時点で16歳未満の扶養親族のことで、平成23年度の税制改正により、それまで可能であった扶養控除ができなくなってしまいました。
なぜなくなったかというと、この頃政権与党であった民主党により、平成22年にそれまでの児童手当を拡充し、「子ども手当」として制度化したため、子ども手当の支給対象となる0歳から中学校卒業までの扶養親族については、扶養控除との二重取りができなくなるよう改正されたためです。
ちなみにこの子ども手当ですが、当初は月額26,000円支給される予定でした。
財源問題から初年度は13,000円を支給し、翌年から満額支給になるはずでしたが、東日本大震災により、復興財源が優先されたため、ついに満額支給にはなりませんでした。
このような経緯から、子ども手当の支給対象となる0歳から15歳までの扶養親族を年少扶養親族と定義し、所得税の扶養親族から外されることになったのです。
住民税における「年少扶養親族」の位置づけ
住民税の計算上、年少扶養親族について扶養控除ができないのは所得税と同じです。ただし、所得税にはない住民税の非課税限度額の計算に、年少扶養親族が影響しますので、こちらも確認しておきましょう。
住民税の非課税限度額(京都市)
非課税限度額 | 計算方法 | |
本人のみ | 35万円 | 35万円×1人 |
本人+配偶者 | 91万円 | 35万円×2人+21万円 |
本人+配偶者+扶養親族 | 126万円 | 35万円×3人+21万円 |
年少扶養親族は住民税の計算上扶養控除はできませんが、上記算式における「扶養親族」には含まれますので、サラリーマンの方であれば、年末調整の際に記載する扶養控除等申告書の一番下「住民税に関する事項」に、個人事業者の方であれば、確定申告書の第二表「住民税・事業税に関する事項」の欄に必ず記載するようにして下さい。
高校生と扶養控除
昔、高校生・大学生の扶養親族については、「特定扶養親族」として一括にされ、63万円の控除が可能でした。
現在、この特定扶養親族が2つに分けられ、大学生に相当する年齢の扶養親族のみ、特定扶養親族として63万円控除できることになりました。
こちらも民主党政権時代に改正されたのですが、高校の実質無償化を実現するために、財源確保の一方策として高校生の扶養控除が廃止されたようです。
「子ども手当」と「児童手当」
また「子ども手当」ですが、こちらも平成25年に「子ども手当」から「児童手当」に名称変更され、所得制限を復活させて改変されました。以前の「児童手当」とは中身が異なりますので、注意して下さい。
扶養控除・児童手当・高校授業料無償化の関係
ここまでのお話を一覧表にしてみました。

まとめ
上記の表をご覧いただくと、なんとなく扶養控除が廃止された分は児童手当等で補填されているように見えますが、児童手当は定額なのに対し、住民税の扶養控除については控除額の一律10%、所得税は5%から45%までの超過累進税率なので、住民税33万円・所得税38万円の扶養控除がなくなれば、所得税の最低税率の方でも実質増税となります。
このように、隠れ増税となっている制度はたくさんありますので、気になる方はぜひご相談下さい。