【家賃支援給付金】同族会社・親族間の賃貸借は対象外?【7/13現在】

7月14日より、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の延長などによって売上が減少した事業者を支援する「家賃支援給付金」の申請受付が開始されます。

「家賃支援給付金」は事業者の事業継続を下支えするため、地代・家賃の負担を軽減することを目的とした給付金で、給付額は申請日の直前1か月以内に支払った賃料をもとに算定され、法人の場合は最大600万円、個人事業者の場合は最大300万円が一括支給される制度です。

申請要領

この制度の概要や適用対象者などの基本的な事項の解説については、この記事では割愛致します。詳細は下記のリンク先にてご確認下さい。

同族会社を経営している場合の問題点

今回は、同族会社と、その代表者等との間で締結された賃貸借契約に基づく会社社屋等の賃借等について適用対象となるか説明していきたいと思います。

給付額の算定根拠とならない契約(自己取引)

まずは「申請要領(中小法人等向け)原則(基本編)」のP19・P20を御覧ください。

こちらには、この制度の給付額の算定根拠とならない契約について書かれています。これの②に該当しますが、具体的にはこのような関係です。

  • 貸主:田中仁さん
  • 借主:株式会社タナカ
  • 田中仁さんは株式会社タナカの代表取締役であり、議決権の51%を有しています。
  • 田中仁さん個人が所有している土地・建物を株式会社タナカに賃貸しており、株式会社タナカは毎月50万円の賃料を田中さんに支払っています。

このような関係は非常に多いと思いますが、結論から先にお伝えすると、この制度の適用はできません。これについて、申請要領にはこう書かれています

② 賃貸借契約の賃貸人(かしぬし)と賃借人(かりぬし)が実質的に同じ人物の取引(自己取引)(※2)


※2 賃貸人(かしぬし)が賃借人(かりぬし)の代表取締役である場合や、賃貸人(かしぬし)が賃借人(かりぬし)の議決権の過半数を有している場合など、会社法に規定する親会社等・子会社等の関係にある場合をさします。詳細は給付規定をご覧ください。

申請要領(中小法人等向け)原則(基本編)P19

これによると、田中さんと、自分の思うようにできる株式会社タナカとは、実質的に同一人物間の取引とみなされて、この制度は適用できないとされています。

共有持分がある場合

ここで問題となるのが、賃貸不動産が共有持分となっている場合です。具体例を挙げて説明してみましょう。

  • 貸主:田中仁さん・田中守さん(仁さんの父)・田中恭子さん(仁さんの妹)
  • 借主:株式会社タナカ
  • 土地建物は貸主の共有持分となっており、それぞれ1/3ずつ有しています。
  • 田中仁さんは株式会社タナカの代表取締役であり、議決権の51%を有しています。
  • 恭子さんは株式会社タナカの代表ではない取締役ですが、株式は有していません。
  • 守さんは株式会社タナカには一切関わっていません。
  • この土地・建物を株式会社タナカに全員同じ条件で賃貸しており、株式会社タナカは毎月60万円の賃料を貸主3人に支払っています。

ややこしいので図にしてみました。結論から申し上げると、以下のようになります。

  1. 仁さん :適用なし
  2. 守さん :適用なし
  3. 恭子さん:適用あり

どのような理屈で適用の可否が分かれるかというと、仁さんは先述の通り、賃借人である株式会社タナカの代表取締役であるため、自己取引に該当し、適用できません。

守さんは、仁さんと事実上同一である株式会社タナカに賃貸しているため、守さんと仁さんの関係で判断することになります。すると、二人は一親等内の親族であるため、後述のとおり、適用できないことになります。

最後に恭子さんですが、恭子さんは代表取締役ではなく、議決権も有していないので、「自己取引」の問題はクリアしています。また、実質的に同一人物である仁さんとの関係は、二親等の親族となりますので、こちらにも該当しない、すなわち「適用あり」となります。

この情報は2020年7月13日時点でのものです。また、上記内容は筆者が「家賃支援給付金コールセンター(0120-653-930)」に直接電話して複数から確認したものではありますが、明文化されたものではありません。後日Q&A等で異なる見解が出るかもしれませんので、予めご了承下さい。

親族間で賃貸借している場合の問題点

給付額の算定根拠とならない契約(親族間取引)

具体的にはこのような関係です。

  1. 貸主:山田一郎さん
  2. 借主:山田たけしさん(一郎さんの長男)
  3. たけしさんは一郎さんが所有している土地を月20万円で賃借し、その土地の上に店舗を建設して事業を行っています。

こちらのような関係も多いと思いますが、残念ながらこの制度を適用できません。

③ 賃貸借契約の賃貸人(かしぬし)と賃借人(かりぬし)が配偶者または一親等以内の取引(親族間取引)(※3)

※3 賃貸人(かしぬし)と賃借人(かりぬし)が夫婦や親子である場合などをさします。

申請要領(中小法人等向け)原則(基本編)P19

「一親等以内」とは?

申請要領には、親族間取引の解説として「一親等以内の取引」と書かれていますが、一親等内の親族と解釈した場合、親族の範囲が問題になってきます。

親族とは、民法第725条によって定められた以下のような関係をさします。

  • 六親等内の血族
  • 配偶者
  • 三親等内の姻族

血族とは、生物学上の血縁と、養子縁組による法律上の血族も含みます。姻族とは、婚姻により生じた関係で、配偶者の血族のほか、血族の配偶者を含みます。

これを踏まえて、適用対象外となる関係は、次のようになります。

  • 「自分」と「配偶者」との賃貸借
  • 「自分」と「親または子」との賃貸借
  • 「自分」と「配偶者の親」との賃貸借
  • 「自分」と「子の配偶者」との賃貸借
  • 「自分」と「養親または養子」との賃貸借

この情報は2020年7月13日時点でのものです。また、上記内容は筆者が「家賃支援給付金コールセンター(0120-653-930)」に直接電話して複数から確認したものではありますが、明文化されたものではありません。後日Q&A等で異なる見解が出るかもしれませんので、予めご了承下さい。

この記事を書いた人

世良 寛之